2018年度コラム〜れんげのおはなしのアンカーを任された、施設心理の仕事一筋、ザ・心理職の高木理恵です。仕事人生の半分以上の年月をれんげ学園で過ごしてきました。
これまでのコラムで書かれてきたように、施設には様々な職員がいて子育てを複数の大人で担っているので、家庭での子育てとは随分様相が違います。家の中に何種類もの専門職が出たり入ったりする環境というのは特殊ではありますが、専門職といっても子どもから見たらひとりの大人。近所の「おじちゃん」や「おばちゃん」のような人がいる、といえば想像しやすいかもしれません。
複数の大人がいるということは、子どもにとって色々なモデルと出会うことができるというのも施設の良い所です。職員から見てもそれは同様で、出会いは子どもだけではありません。沢山の人との出会いがあり、別れもあります。1人の人間が経験する出会いと別れがなんと多種多様なことか、そしてなんと濃い関わりの多いことか…と深い感動に事欠かないのもこの領域の特徴です。
私自身は学生時代から子ども虐待の対応、主に傷つきからの回復について関心があったので、児童養護施設の心理職になるために少々遠回りし、念願叶ってこの仕事をしています。虐待環境がどうして起こるのか、予防には何が必要なのかと悩んだ時期に「人が産まれてから出会う人をカードに例えると、虐待環境につながる人の手持ちのカードにはマイナスのカードが多く、その影響力が大きいままだと虐待の連鎖が起こってしまう。でも、たとえ苦しい環境に身を置くことになっても手持ちのカードにプラスのカードがあれば、そしてそのプラスのカードの影響を強く受けていれば、虐待にはつながらないんだ」ということを、尊敬するジャーナリストの方から教えてもらいました。私たち一人ひとりが手持ちのカードにプラスのものを増やしていけば良いのかと妙に納得しました。今ちょうど年度末で出会いと別れの時期でもあり、振り返ってみてつくづく手持ちのカードに恵まれてきたことを噛みしめています。施設で出会う子どもたちにも同じようにプラスの出会いを経験してほしい、そして職員にとっても「れんげ学園で出会えて良かった」と感じる瞬間がたくさんあって欲しいと願っています。
学園での仕事は刺激があふれ、充実した日々を送れることには間違いないですし、出会えて良かったと思う魅力的な人も沢山います。興味のある方はぜひ働きに来てください。お待ちしております。