生活のなかにいる心理職の仕事って

この度、このコラムのトップバッターに指名されました、心理療法担当職員の岩崎光太郎です。

 れを読んでいるみなさんは、心理職という職種の人がしている仕事をどのようにイメージされるでしょう?私には“心理療法担当”という名前がついてしまっていて、「心理療法をする人なんだな」と思われてしまいそうですが、私自身はそんな風に思われることに大きな違和感を感じないでいられません。

 

個別で子ども達と時間を取って過ごすことがあるのは確かで、心理療法を行うことも実際にあります。だけれど、外来型の相談室で行われているような(狭義の)心理療法ができるには条件があって、ある程度本人がきちんと困っていることを感じていて、自らそれを持ち込むことができないと、なかなか成立しません。

 

 


児童養護施設にやってくる子ども達は、そもそもが自分自身の課題が理由で施設に入ってくるのではありません。在宅時の家族とのかかわりのなかで苦しい思いをしながら生き抜いたあと、施設の生活のなかでその影響が表面化してきた時、それを自分自身の課題として受け止めることは容易ではないので、そのことを心理職との間で扱おうとしても「別に困ってないし!」という反応が返ってくるのが普通です。だから、心理職はやんわりとその子の課題を指摘しつつも深掘りはせず、「心理面接に行ってもいいな」と思ってもらえるよう工夫しながら、かかわり続ける道を探ります(もちろん上手くいかないこともあります!)。

 


そんな子ども達に日々付き合っているのは、施設の主力であるケアワーカー(児童指導員・保育士)です。心理面接に足が向く子にもそうでない子にも毎日毎日かかわって、関係づくりを続けています。しかし、そもそもが親密な人間関係のなかで傷ついてきた子ども達ですから、関係づくりがスムーズにいくとは限りません。関係づくりのプロセスの中で、子どもだけでなく職員も難しさを感じて苦しく思うこともしばしばです。

 

 

 


そういう時、この子との間に何が起こっているのだろうか?ということを職員は頭をひねって考えますが、このプロセスに付き合うことは心理職のとても大切な仕事のひとつです。心理面接で子ども達にかかわることだけが、子ども達に起こっていることを見立てるチャンスではありません。ケアワーカーの語りに耳を傾けることや、ときには生活での様子を直接にみることもより良い見立てと支援のためのヒントを与えてくれるのです。 

 

そういう意味で、私は必ずしも“心理療法担当”ではないと思っています。子ども達にとっても同僚の職員にとっても、“良き伴走者”になることができているかどうか…そこをいつも忘れずに、一歩ずつ地道に進んでいきたいと思います。


 

さて、このリレー方式のコラム、次回8月は子ども達にも積極的にかかわれる事務職・千田仁恵職員の登場です。

どうぞお楽しみに!

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

心理療法担当職員 岩崎光太郎